今、100年に1度とも言われる大変革期を迎えている自動車業界では、コネクテッド(Connected)、自動運転(Autonomous)、カーシェアリング(Shared&Services)、電動化(Electric)、いわゆるCASE時代に向けた様々な取り組みで大きな注目を集めています。中でも、「自動車」と「あらゆるモノ」が通信するV2X(Vehicle to Everything)技術を使えば、対車・人・物との交通事故を限りなくゼロに近づけることができると期待されています。
本記事では、そんなV2Xの基礎知識と活用事例、および今後実用化が期待される未来の技術について解説していきます。
V2X(Vehicle to Everything)は、「自動車」と「あらゆるモノ」を繋げる無線通信技術の総称です。ITS(Intelligent Transport Systems)の主要な要素の1つとして近年特に注目されており、V2Xの発展は交通安全だけでなく、交通渋滞の解消、環境負荷の低減、快適な移動体験の提供など、多様な分野での活躍が期待されています。
2022年現在、車と接続する「モノ」として想定されているのは自動車(V2V)、インフラ(V2I)、歩行者(V2P)、ネットワーク(V2N)の4つです。ここからは、V2Xがもたらすメリットを現在実現している技術を中心に分かりやすく解説します。
V2V(自動車と自動車の通信)
V2Vは、自動車と自動車が相互に通信を行って情報を共有し、必要に応じた運転支援を実現する技術です。日本ではトヨタ自動車が2015年に世界に先駆けてITS専用周波数を活用した運転支援システム「ITS Connect」を実用化しました。ITS Connectには下記のようなV2Vが組み込まれています。
しかし現在、トヨタ自動車が販売する一部の車種にオプション機能として提供され、V2V対応の車同士でしか通信できないため、様々な機能を提供しているもののまだ広く普及していないのが現実です。今後、V2V 通信の更なる発展により,衝突防止支援や追従走行支援といった高度な安全運転支援は実現できるでしょう。
V2Iは、自動車と道路が相互に通信を行って情報を共有し、必要に応じた運転支援を実現する技術です。V2Vと同様、日本では2015年に世界に先駆けて「ITS Connect」として実用化されており、下記のような運転支援を実現しています。
V2Iについては、ITS Connectをはじめホンダなども既に採用済みです。しかし、V2Iは道路側に設置された信号機などと通信を行うため、インフラ側の対応も必要になります。現在、日本では東京都や愛知県などの一部の地域で対応できるといわれています。
V2Pは、自動車と歩行者(のデバイス)が相互に通信を行って情報を共有し、交通弱者の保護や事故防止などを実現する技術です。V2Pは比較的新しい技術でまだ実用化には至っていませんが、実証実験においては多くの成功例が発表されています。
例えば、2018年1月に日産自動車が行ったV2Xの実証実験では、見通し外の歩行者を検知し、GPSによる位置情報と車両の走行速度などから最適な走行状態に誘導するための技術の有効性が確かめられています。
→セルラーV2X共同実証実験レポート|OKI
V2Pが実現すれば、歩行者の携帯端末の位置や速度情報などが自動車に共有されるため、例えば死角からの飛び出しなど、車のセンサーだけでは対応しきれない事故を防ぐことが期待されます。
V2Nは、自動車とネットワークが相互に通信を行って情報を共有し、必要な運転支援を含む様々な情報の利活用を実現する技術です。V2Nの技術によって実現できることは本当に多様なため数えだすとキリがありませんが、ここでは身近な例からいくつか紹介します。
2022年現在におけるV2Xの課題の1つとして「V2X対応車両・インフラが普及していない」ことが挙げられます。
例えば出会い頭注意喚起(V2V)や右折時注意喚起(V2V)は、接近する相手車両がV2X対応車両でなければ全く機能しません。右折時注意喚起(V2I)では道路脇に設置されたセンサーが接近車両や歩行者を検知するので相手車両がV2X対応車である必要はありませんが、この場合はV2X対応センサーなどのインフラが広く整備されていなければ、効果的な事故防止対策とはなり得ません。
そんな中、今後の活用が期待されているのがV2Vを用いた「死角情報の共有システム」です。
V2Xに対応する車同士が、各車両のセンサーで検知した歩行者・自転車・オートバイ・障害物などの情報を互いに共有することで、自車両だけでは把握しきれない死角情報を用いた運転支援を実現します。事故を起こす可能性が高い接近車両や歩行者がV2Xに対応していなくても、事故を防ぐことができるのです。この技術は2023年頃に完成、2025年頃までに実用化される見込みです。
また、V2Xに対応する車両やデバイスが十分に普及した場合、車は付近(数m~数百m)に存在するあらゆる車両や歩行者の位置情報・速度・方向、あるいは他車両が検知した障害物・道路情報などをリアルタイムに取得でき、それを適切な運転支援または自動運転に活用することができるようになります。
V2Xが発展すれば「車」と「すべて」が無線通信により繋がることで、あらゆる道路情報を取得・分析して運転支援に活かすことができるようになります。また、将来的に自動運転が実用化すれば人為的な運転ミスは限りなく減り、V2Xの情報共有によってシステムの死角も無くなりますから「交通事故ゼロ」の世界も夢物語ではありません。
とはいえ、V2Xや自動運転技術の実現にはまだまだ高いハードルがあり、今後数年〜十数年かけてそれらを超えていく必要があります。
結局、自動運転の実現のためには、車側のセンシング技術だけでなく、V2X技術の早急な普及が必要となります。
AutoCryptは安全なV2X技術を提供します。是非一度、目を通してみてください。