アメリカのネバダ州にあるラスベガスは24時間営業するカジノのようなエンターテインメントを楽しむ観光地で有名ですが、企業にはある展示会が開催される場所としてよく知られています。それは世界最大規模の展示会「CES」です。「Consumer Electronics Show」の略であるCESはもともと家電製品やIT機器を中心とする展示会でしたが、出展カテゴリーを拡大して多様な次世代技術が確認できるデジタル総合展示会へと変わりつつあります。
CESを見たら数年先の未来が分かるというほど影響力のある展示会であり、その影響力に相応しい最先端の技術やその技術を使った製品を確認することができます。最近では、モビリティ分野までカテゴリーが拡大され、もはや世界最大規模の自動車ショーといえるほど多くの次世代モビリティ技術が確認できる場になっています。今回のCES 2023は1月5日から1月8日までラスベガスの会場ラスベガスコンベンションセンター : LVCCで開催されました。展示会には約3,200社以上が出展、世界各地から11万人以上が参加し、CES 2022と比べたら出展社数も参加者も倍以上になり、コロナ以前の規模に近づいた状態になりました。
CES 2023で注目したトレンドはメタバース、モビリティ、ヘルスケア、サステナビリティこの4つでした。その中でも、当社はモビリティを中心にCES 2023を視察してきましたので、その現場をお届けしたいと思います。
今回のCES 2023では自動運転やCASE時代に必要な自動車及びテクノロジーを確認することができました。今回のCES2023でも話題になった、次世代モビリティの概念として使われている言葉がソフトウェア定義型自動車(Software-Defined Vehicle、SDV)です。ソフトウェア定義型自動車(SDV)はハードウェアとソフトウェアを分離して、開発したソフトウェアを様々なハードウェアに実装することで、従来の自動車では体験することができなかった、新しい価値を提供できるようになります。したがって、ソフトウェア定義型自動車(SDV)が普及されたら、自動車産業において重要になるのはハードウェアではなく、ソフトウェアになります。
ソニー・ホンダモビリティが作ったプロトタイプのEV自動車「AFEELA」はソフトウェア定義型自動車(SDV)として開発された次世代モビリティの1つの例だと言えるでしょう。「モビリティと人のコミュニケーション」をテーマとして作り上げたAFEELAは、自動車の外にいる人とコミュニケーションできるメディアバー、内部で音楽や映像、ゲームも楽しめるディスプレイ等、自動車の内・外部に搭載した45個のセンサやディスプレイを活用して人とのコミュニケーションを積極的に取ろうとしたデザインになっていました。
また、CASE時代に使われそうな未来型目的基盤車両(PBV)もたくさんありました。韓国の自動車部品企業である現代モービスが開発している未来型目的基盤車両(PBV)コンセプトモデル「M.Vision TO」とApplied EV社の「Blanc Robot EV」が人々からの関心を集めました。現代モービスの未来型目的基盤車両(PBV)は顧客のニーズに合わせて設計することができるモジュール化された車両であり、モビリティとして、運送や居住目的としても利用できます。Applied EV社の「Blanc Robot EV」もモジュール化された車両で、運送及び特定分野に合わせて活用できるようにカスタマイズできます。両コンセプトモデルは自動運転で動くように設計されているため、人々は運転するのではなく、移動しながらエンターテインメントを楽しむことができます。
CES 2023で確認した次世代モビリティ技術は「移動しながら車内で提供できること」を考えている段階になっていました。ソニー・ホンダモビリティのAFEELAは車とエンターテインメントの融合を、現代モービスとApplied EV社は車両の利用目的に合わせてサービスを提供することに焦点を当てています。ソフトウェア定義型自動車(SDV)やCASE時代で「運転」は必須ではなくなります。したがって、移動する時間に経験できる何かを提供することが、これからの自動車産業の鍵となるでしょう。しかし、この経験は完全自動運転を前提にしていますので、安全に自動運転できるようにする技術、つまり「セキュリティ」がより重要になると考えられます。
これからの自動車産業はセキュリティに対するより真剣な取り組みが求められます。UNECE WP29で合意された自動車のサイバーセキュリティ法規(UN-R155)が2022年7月から実施されており、2024年7月からは全ての新車に義務付けられます。UN-R155やISO/SAE 21434によって、自動車メーカやサプライヤーに対し自動車開発から販売までのライフサイクルにおけるサイバーセキュリティマネジメントシステム(CSMS)の構築が必須になるなど、今後は自動車のサイバーセキュリティにどう対応していくかが重要な課題になると考えられます。
当社では、この課題を解決できるサービスを提供しています。2007年から17年間、自動車のサイバーセキュリティを研究・開発してきた企業で、車内通信セキュリティ、V2Xセキュリティ、車載OSS脆弱性診断ツール及び車載ソフトウェア専用ファジングテストツールを提供しており、自動車メーカ及びサプライヤー様が自動車のサイバーセキュリティマネジメントシステム(CSMS)を構築するために必要なサービス全てを揃えています。また、日本の各地域で実証実験が活発に行われているMaaS事業に関して、Autocrypt FMSというMaaS向けソリューションも提供しています。
今回のCES2023に出展することはできませんでしたが、当社のセキュリティサービスを適用できるモビリティ技術や協業できるモビリティ分野を確認することができた貴重な時間になったと思われます。これから当社はCES2023で確認した次世代モビリティ技術の実現に必要とされる自動車サイバーセキュリティを提供し、より安全なモビリティ社会づくりに貢献していきたいと思います。