自動運転技術が普及している現状、車に搭載されたコンピューターが運転手の代わりに自動で運転操作してくれる未来が少しずつ近づいています。自動運転は、移動時の利便性の向上や車両交通事故の減少など、様々なメリットが期待されています。自動運転技術が急速に進む中、人が運転操作を行わない関係上、免許証が不必要になるのでは?とお考えの方も多いのではないでしょうか。この記事では、自動運転レベルの特徴や免許証が不必要になる自動運転技術について解説します。
車をカーライフの一部として現在も使用している方が多いでしょう。自動車業界でよく耳にする「自動運転技術」は現在販売されている各メーカーの自動車にも多数搭載されています。具体例としては、衝突被害軽減ブレーキや先行車との距離を一定に保ち走行する「ACC(アダプティブクルーズコントロール)」「LKAS(車線逸脱防止システム)」などが挙げられます。自動運転という言葉を聞くと、ハンドル操作を全自動で操作してくれる技術と勘違いされる方が多いですが、私達のカーライフの中で着実に進歩している技術に変わりありません。
自動運転技術が目指す未来は「人が運転操作に関与しない完全自動化の運転システム」です。自動運転技術の進歩により、免許証の必要条件が変更される予定がありますが、自動運転レベルにより免許の有無が異なります。各自動運転レベルごとの特徴を以下の表でまとめました。
【自動運転レベル】 | 【自動運転レベルごとの特徴】 |
自動運転レベル1 | 運転支援システムによる車両制御を実施可能 |
自動運転レベル2 | 特定条件下において自動制御可能 |
自動運転レベル3 | 条件付自動運転可能 |
自動運転レベル4 | 特定条件下において完全自動運転 |
自動運転レベル5 | 完全自動化 |
免許証の有無については、大きく分けて以下2点です。
・自動運転レベル1〜3までは免許証が必要
・自動運転レベル4〜5までは免許証が不必要になる予定
自動運転レベル1〜3までの技術レベルでは、運転手の操作が必要なため「免許証の携帯」が必須になります。一方、自動運転レベル4以降では自動車の操作関係をシステムが全て代行するため、免許証は不必要になる予定です。自動運転レベル1〜2は「完全自動運転」ではありません。あくまで運転操作を支援する技術を搭載したレベルです。具体例としては、ハンドル操作や加速性能を支援する技術であり、ACC(アダプティブクルーズコントロール)やLKAS(車線逸脱防止システム)などが該当します。
自動運転レベル3は、運転操作を自動運転システムが行い、運転中の緊急時やシステム不具合時に運転手が操作するレベルです。自動運転レベル3は「高速道路などの特定走行場所のみ」で使用が許可されています。一般道や公道での走行は許可されていませんでしたが、2020年4月以降、一定条件下での自動運転車の走行が許可されました。道路交通法改正以降、自動運転レベル3に対応している車種は「アウディA8」のみとなっています。法改正や整備が進んでいる中、自動運転レベル3が国内自動車メーカーに普及するには、早くとも、もう3年以上の時間が必要になるでしょう。
自動運転レベル4では、運転操作だけではなく、緊急時やシステム不具合時もコンピュターシステムが運転手の代わりに操作し対応してくれます。自動運転レベル3と同じく高速道路などの特定道路でも走行できる技術レベルです。
自動運転レベル5になると、全ての運転操作が自動化され、高速道路はもちろん、公道や一般道でも走行可能な状態になります。ドライバーの操作がなくなる反面、交通事故の減少や運転車の利便性向上など、様々な効果が期待できる技術レベルです。
自動運転技術の進歩により、ドライバーが運転操作をせずに走行できることで「免許証が不必要」になると予想されています。しかし、たとえ自動運転レベル5になり、運転操作が不必要になった場合、現在と免許証の枠組みとは異なり「自動運転車免許制度」が創設される可能性があります。自動運転車免許制度が創設される理由としては、自動運転車走行中による車両事故に対する損害責任が主な原因です。
日本における自動運転の実証実験では、遠隔操作者に「2種免許」の所持を義務付けする方針があり、安全性への配慮を最大限に高めた状態で試験が盛んに実施されています。また、実証実験時の遠隔自動運転の無人車両を操作する担当者に「モニター映像」や「緊急ブレーキの操作」も義務づけられています。実証内容は、5Gを活用した実証実験や複数台の自動運転車を同時に使用した実証実験など、より高度な試験を実施しています。
自動運転レベルの技術力が進歩している中、全ての自動車メーカーが「自動運転」について前向きな姿勢な訳ではありません。外車自動車メーカーとして人気が高いボルボでは、自動運転システムが「レベル4」に達成するレベルまで自動運転システムを搭載しないと明言しています。自動運転システムについて、ボルボが積極的に取り組めない理由の1つに「自動運転システムの不完全な技術力」が挙げられます。自動運転システムは人々の暮らしと安全性能を高めてくれる反面、システム異常や不具合時に大きな車両事故に発展する可能性が高いと推測しています。
日本政府の国土交通省では、高度道路交通システムの方針について、2030年までに「世界一安全で円滑な道路交通網社会の形成を目指す」ことを目標に掲げています。日本の自動車メーカーでは、2021年に自動運転レベル3を搭載した「レジェンド」をホンダが世界初で発売し実用化されています。さらに、Googe関連の自動運転開発企業と自動運転技術領域の共同研究に向けた検討を米国で既に開始している状況です。ホンダ以外にも、トヨタ自動車では、ドライバーの操作が不要である自動運転レベル4の自動運転車の実用化に向けて実証実験を重ねている最中です。日産がDeNAとタッグを組み、横浜みなとみらい地区において「Easy Ride」と呼ばれる無人タクシーサービスの実証実験に取り組んでいます。
自動車の自動運転技術が進歩する中、高度な自動運転を実現するためには、交通道路などのインフラ整備の調整も必須事項となります。具体的には、自動センサーやカメラで検知できない情報や渋滞を解消するために車同士が通信情報を共有し合い、環境整備を整えていくなどの課題が挙げられます。自動運転システム5を搭載した車が一般道路を走行できる未来を実現させるためには、自動運転技術だけでなく、周辺環境の整備も今後の課題と言えます。
自動運転技術が各自動車メーカーで着実に進歩している中、免許証の必要条件や自動運転免許の有無など、数多くの問題点が挙げられます。自動運転技術は人々の暮らしをより快適にする効果が期待されますが、その反面、車をバスや電車などのように「移動手段の一部」として利用する未来が近づいているのかもしれません。車が完全自動化される自動運転システム5を搭載した近未来の車の開発は、すぐそこまできています。