車載ソフトウェア

2024年6月26日

AUTOSAR ClassicとAdaptiveについて|車載ソフトウェアの未来

現代の自動車は高度な技術を搭載した「走るコンピューター」へと進化しており、この進化を支えるのが車載ソフトウェアです。エンジンやブレーキの制御から、自動運転技術やインフォテインメントシステムまで、車両の多くの機能はソフトウェアによって管理されています。こうした複雑なソフトウェアシステムの標準化を推進するために、AUTOSAR(Automotive Open System Architecture)は2003年に発足しました。AUTOSARの目的は、異なるメーカー間での互換性を確保し、開発効率を向上させることにあります。KPMGのレポート(2023年)によると、世界の自動車メーカーの80%以上がAUTOSARを採用しています。AUTOSARには、ClassicとAdaptiveの2種類があります。本記事では、AUTOSAR ClassicとAdaptiveの特徴と選び方について解説します。 サイバーセキュリティに関する国際規格の要件を満たしながらも、効率的にAutosarを適用することは簡単ではありません。弊社はAdaptiveに適用可能なセキュリティソリューションをしています。Autosar Adaptive向けのセキュリティソリューションの詳細はリンクからご覧いただけます。 AUTOSARとは 正式名称AUTomotive Open System ARchitecture (以下、AUTOSAR) は、異なるメーカー間での互換性を確保し、開発効率を向上させる目的で発足されました。自動車の電子制御ユニット(ECU)に搭載されるソフトウェア開発の標準規格であり、車載ソフトウェアにおける共通言語のような役割を果たします。AUTOSARのアーキテクチャは、「アプリケーション層」「ランタイム環境(RTE)」「ベーシックソフトウェア(BSW)」という3つの階層から構成されています。この階層構造の最大の特徴は、アプリケーションソフトウェアとハードウェアを明確に分離する点にあります。これにより開発者は、仮想ファンクションバス(VFB)という仕組みを通じて、特定のハードウェアに依存しないソフトウェア開発が可能になります。その結果、ソフトウェアの再利用性、移植性、保守性が向上し、異なるサプライヤーが開発したソフトウェアコンポーネントでもスムーズな連携が実現します。 ここまでが、AUTOSARの骨格となる基本的な仕組みです。この構造を理解した上で、さらに詳しい導入方法や開発のポイントについて知りたい方は、次の記事が参考になります。 車載ソフトウェアの標準仕様AUTOSARとは?基礎説明から導入時のポイントまで   AUTOSAR Classicとは AUTOSAR Classicは自動車業界で幅広く採用されている車載ソフトウェア開発の標準規格です。この規格はソフトウェアの再利用性、移植性、保守性を高めることを目的としており、自動車の電子制御ユニット(ECU)に搭載されるソフトウェアの開発を効率化します。AUTOSAR Classicの特徴は以下の4つです。 ①階層化されたソフトウェアアーキテクチャ  アプリケーション層、ランタイム環境(RTE)、ベーシックソフトウェア(BSW)の3つの層で構成され、明確な役割分担とインターフェース定義によってソフトウェアのモジュール化を促進します。 ②標準化されたインターフェース ソフトウェアコンポーネント間の通信や、ハードウェアへのアクセスを標準化することで、異なるサプライヤーやプロジェクト間でのソフトウェアの再利用を容易にします。 […]
2024年5月20日

車載ソフトウェアの標準仕様AUTOSARとは?基礎説明から導入時のポイントまで

百年に一度の大変革期を迎えている自動車業界において、技術の進歩は目まぐるしい現状となっています。今や自動車は”走るコンピュータ”と言われることもあり、約200個のECU※が搭載されています。そのECUを動かすのに欠かせないものがソフトウェアです。 技術が進歩する一方で、ソフトウェアが複雑化することが大きな課題になっています。この課題を解決すべく、自動車の制御ソフトウェアの標準化活動を実施し、車載電子制御ユニット用の共通標準ソフトウェアアーキテクチャを策定、確立したのがAUTOSARと呼ばれるソフトウェア規格です。今回の記事では、自動車ソフトウェアの標準仕様であるAUTOSARについて説明します。 ※Electronic Control Unitの略称。車載に搭載される電子制御をするユニットを指す。   AUTOSARとは 正式名称AUTomotive Open System ARchitecture (以下、AUTOSAR) は、2003年に発足した自動車業界のグローバル開発パートナーシップです。活動の目的は、インフォテインメントを除く領域で、車載電子制御ユニット用の共通標準ソフトウェアアーキテクチャを策定、確立することになります。このAUTOSARが目指す標準化の背景には、自動車業界が直面していた深刻な課題があります。かつて自動車の機能は主にハードウェアによって実現されていましたが、技術の進化に伴い、現代の自動車は「走るコンピュータ」と化しました。1台の車に搭載されるECU(電子制御ユニット)の数は100個を超えることも珍しくなく、ソフトウェアのコード量は爆発的に増大しました。これにより、開発は複雑化し、コストと期間が増大する結果となりました。さらに、開発したソフトウェアを別の車種へ利用することが難しく、非効率的になった課題も顕在化しました。 AUTOSARはこの課題を解決するために生まれました。その核心は、ソフトウェアとハードウェアを切り離す「抽象化」という考え方にあります。AUTOSARの標準化されたプラットフォームを介することで、アプリケーションソフトウェアは特定のハードウェアに依存することなく開発できます。その結果、一度開発したソフトウェアコンポーネントを異なる車種やECUで再利用することが可能になり、開発効率と品質が飛躍的に向上しました。このようにAUTOSARは、複雑化する一方の車載ソフトウェア開発に秩序と効率をもたらすための不可欠な存在となっています。   AUTOSARがもたらす「3つの標準化」という大きなメリット AUTOSARがもたらす具体的なメリットは、主に以下の「3つの標準化」によって実現されます。これにより、コスト削減や開発効率の向上はもちろん、サプライチェーン全体での連携強化にもつながります。 1. 開発方法の標準化 AUTOSARでは車両全体のアーキテクチャや各ECUの設計を統一された記述形式(方法論)で行います。これにより、開発者は個々のECUのハードウェア仕様の違いを意識することなく、本質的なソフトウェア開発に集中できます。結果として、開発プロセス全体が効率化され、ヒューマンエラーの削減にも貢献します。 2. アプリケーションインターフェースの標準化 アプリケーションを構成する個々の機能(ソフトウェアコンポーネント、SW-C)間の接続ルール、すなわちインターフェースが標準化されます。これまではコンポーネントごとに接続仕様を確認・定義し直す手間が必要でしたが、AUTOSARではその作業が不要になります。これにより、コンポーネントの組み合わせや再利用が格段に容易になり、開発効率を大幅に向上させることが可能です。 3. レイヤードアーキテクチャ(ソフトウェア構造)の標準化 AUTOSARの最大の特徴ともいえる階層化アーキテクチャ(レイヤードアーキテクチャ)により、アプリケーションとハードウェアが明確に分離されます。この標準化されたソフトウェア構造のおかげで、特定のECU向けに開発したアプリケーションを最小限の修正で別のECUへ再配置・再利用することが可能になります。これにより、コスト削減と開発期間の短縮が実現できます。これら3つの標準化は、単に社内の開発効率を高めるだけではありません。メーカーとサプライヤーが「AUTOSAR」という共通言語で対話できるようになるため、グローバルなサプライチェーン全体での協業が円滑になり、最終的には顧客の多様なニーズへ迅速に応えることにも繋がる、非常に大きなメリットです。 […]
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