2023年1月17日

世界最大の展示会CES2023で確認した次世代モビリティ技術

CES2023とは アメリカのネバダ州にあるラスベガスは24時間営業するカジノのようなエンターテインメントを楽しむ観光地で有名ですが、企業にはある展示会が開催される場所としてよく知られています。それは世界最大規模の展示会「CES」です。「Consumer Electronics Show」の略であるCESはもともと家電製品やIT機器を中心とする展示会でしたが、出展カテゴリーを拡大して多様な次世代技術が確認できるデジタル総合展示会へと変わりつつあります。 CESを見たら数年先の未来が分かるというほど影響力のある展示会であり、その影響力に相応しい最先端の技術やその技術を使った製品を確認することができます。最近では、モビリティ分野までカテゴリーが拡大され、もはや世界最大規模の自動車ショーといえるほど多くの次世代モビリティ技術が確認できる場になっています。今回のCES 2023は1月5日から1月8日までラスベガスの会場ラスベガスコンベンションセンター : LVCCで開催されました。展示会には約3,200社以上が出展、世界各地から11万人以上が参加し、CES 2022と比べたら出展社数も参加者も倍以上になり、コロナ以前の規模に近づいた状態になりました。 CES 2023で注目したトレンドはメタバース、モビリティ、ヘルスケア、サステナビリティこの4つでした。その中でも、当社はモビリティを中心にCES 2023を視察してきましたので、その現場をお届けしたいと思います。 ソフトウェア定義型自動車(SDV)への関心 今回のCES 2023では自動運転やCASE時代に必要な自動車及びテクノロジーを確認することができました。今回のCES2023でも話題になった、次世代モビリティの概念として使われている言葉がソフトウェア定義型自動車(Software-Defined Vehicle、SDV)です。ソフトウェア定義型自動車(SDV)はハードウェアとソフトウェアを分離して、開発したソフトウェアを様々なハードウェアに実装することで、従来の自動車では体験することができなかった、新しい価値を提供できるようになります。したがって、ソフトウェア定義型自動車(SDV)が普及されたら、自動車産業において重要になるのはハードウェアではなく、ソフトウェアになります。 ソニー・ホンダモビリティが作ったプロトタイプのEV自動車「AFEELA」はソフトウェア定義型自動車(SDV)として開発された次世代モビリティの1つの例だと言えるでしょう。「モビリティと人のコミュニケーション」をテーマとして作り上げたAFEELAは、自動車の外にいる人とコミュニケーションできるメディアバー、内部で音楽や映像、ゲームも楽しめるディスプレイ等、自動車の内・外部に搭載した45個のセンサやディスプレイを活用して人とのコミュニケーションを積極的に取ろうとしたデザインになっていました。 また、CASE時代に使われそうな未来型目的基盤車両(PBV)もたくさんありました。韓国の自動車部品企業である現代モービスが開発している未来型目的基盤車両(PBV)コンセプトモデル「M.Vision TO」とApplied EV社の「Blanc Robot EV」が人々からの関心を集めました。現代モービスの未来型目的基盤車両(PBV)は顧客のニーズに合わせて設計することができるモジュール化された車両であり、モビリティとして、運送や居住目的としても利用できます。Applied EV社の「Blanc Robot EV」もモジュール化された車両で、運送及び特定分野に合わせて活用できるようにカスタマイズできます。両コンセプトモデルは自動運転で動くように設計されているため、人々は運転するのではなく、移動しながらエンターテインメントを楽しむことができます。 CES […]
2023年1月9日

自動車の機能を決める鍵、ソフトウェアの開発におけるセキュリティ

現在、自動車はWireless KeyやETC、GPSなど多くの通信で外部と繋がっており、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング&サービス)、Electric(電気自動車)のCASEを制す企業が2020年代以降の自動車業界を制す、と言われています。 このCASEに代表されるように、自動車に求められる機能は拡大しつつあります。これまで自動車メーカーは特定のハードに合わせてソフトウェアを開発してきたハード定義型自動車を開発してきましたが、現在、開発を効率化し、自動車産業の新たな発展に寄与するとして「ソフトウェア定義型自動車(SDV)」への転換を目指す自動車メーカーが増加しています。   到来するソフトウェア定義型自動車(SDV)の時代 従来、顧客が車に求めたのはハード面的観点である「外形・色・内装のデザイン」でした。それに追加して、近年求められているのはGPSによる地図表示と道の案内、センサーによる事故防止機能などドライバーを支援するソフト面的観点の機能にスイッチしてきています。これより、自動車メーカーは「各種センサー・カメラ・レーダー、距離計測デバイス」などの機能を付加することに主眼を置いたソフトウェア定義型自動車(SDV)の開発を進めています。 ハードウェアの標準化が加速している今、従来のハードウェア中心主義から付加価値を決定する要因と想定されるソフトウェア中心へと自動車の開発の軸がシフトしています。日本、海外に関わらず、自動車の進化がソフトウェアによって実現される世界が近づいています。   車両用オープンソースソフトウェア(OSS)の増加 先述の通り、特定のハードウェアに合わせてソフトウェアを個別に開発してきた既存の自動車と異なり、開発したソフトを様々なハードウェア上で実行できるような自動車が注目を集めています。 具体的には、顧客に求められる機能を実現するため、コネクティビティユニット、インフォテインメントシステム、自動運転システムなどのより高度なシステムが開発されるのに伴い、多くのソフトウェアが使用されています。これらの増加するソフトウェアのニーズにこたえるため、オープンソースソフトウェア(OSS)をより多く採用し、開発されたシステムに統合する動きが増えてきています。 オープンソースソフトウェア(OSS)を使用する理由は以下の通りです。まず、通信スタックと暗号化ライブラリなど、すぐに利用できるコードで様々な機能を実現できるためです。次に、OSSの開発をサポートするための大規模なコミュニティが存在するためです。最後に、ライセンスの種類によって条件があるものの多くのコードが無償で使用できるためです。 自動車産業を対象としたOSSの一つ、AGL(Automotive Grade Linux)を紹介します。AGLは2018年発売のトヨタ自動車「カムリ」に採用されており、車載インフォテインメントシステムに焦点をあてています。その他にも、自動運転を実現するAutowareや機能安全を考慮したRTOS(リアルタイムOS)のZephyr Projectなど様々な自動車産業を対象としたOSSが知られています。 このように利益が多いため、自動車産業を対象としたOSSは多く使用されていますが、自動車産業でソフトウェア開発を行う際の課題もあります。   車両用オープンソースソフトウェア(OSS)の課題 考慮すべき主な課題はライセンスコンプライアンスとセキュリティです。 まず、ライセンスコンプライアンスについて説明します。OSSにはライセンス条件が異なるさまざまなライセンスタイプがあり、ライセンスタイプによって、OSSコンポーネントを自由に使用できるかどうか、帰属告知が必要か否か、またはOSSコンポーネントを含むリリースされた製品に対しても同じライセンス条件でリリースする必要があるのかどうかが規定されています。法的な観点から、ソフトウェアを開発する組織は各ライセンスタイプで定義されたライセンス条件を順守することが重要であり、遵守できなければ、訴訟のリスクが発生しえます。 実際に、自動車の事例ではないが、スマートテレビやDVDプレーヤーなどに含まれるBusyBoxと呼ばれるGPLのUNIXユーティリティーの著作権を侵害したことによる、家電メーカー14社に対する訴訟が発生しました。このうち13社が和解し、残る1社は欠席裁判で敗訴し罰金の支払いを命じられています。 次に、OSSとセキュリティについて説明します。自動車に限らず、ソフトウェアは開発中にセキュリティの脆弱性がソフトウェアコードに混入する可能性があります。自動車産業は他業界と比較して特に、ソフトウェア開発に厳しい条件があることで知られています。しかし、自動車産業に限定しない目的で開発されたOSSコンポーネントを一部組み込むと、それが自動車産業の要件を満たさず、セキュリティリスクをもたらす可能性があります。 実際に、OSSの脆弱性が車載システムへの攻撃を引き起こした事例は数多くあります。そのうちの一つ、Tesla(テスラ)「モデルS」に対するハッキングを紹介します。まず、車載システム(Linux)のOSSであるWebブラウザ上に存在した脆弱性により、攻撃者がブラウザ権限を獲得したことで、攻撃者がターゲットシステムにアクセス可能となりました。その後OSSであるLinuxカーネルの脆弱性によって攻撃者が管理者権限を獲得し、ターゲットシステムの乗っ取りに成功しました。管理者権限を獲得することで、攻撃者がCANパス上で任意のメッセージをリモートで送信でき、様々な車両機能に影響を与えるエントリポイントになりました。 […]
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