2023年9月15日

「韓国次世代モビリティ技術展2023」出展レポート

9月5日~6日、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)が主催する「韓国次世代モビリティ技術展2023」が自動車製造の中核拠点である名古屋で開かれました。日本の自動車メーカーやサプライヤー企業らと強固な協力関係を築く場として設けられたこのイベントでは、バッテリーや素材、車載ソフトウェアなど韓国を代表するモビリティ企業46社がそれぞれの製品やソリューション、取り組みなどを紹介しました。 今回アウトクリプトは、昨年に続き2年連続でブース出展をさせていただき、WP29 UN-R155準拠に必要となるサイバーセキュリティ対策と当社のコンサルティング戦略を紹介しました。また、車載内部ネットワークにおける包括的なサイバーセキュリティを提供する「AutoCrypt IVS」、車載用ファジングテストソリューション「Security Fuzzer」、OSS脆弱性検出及びSBOMの作成を支援する「Security Analyzer」まで、サイバーセキュリティの高度化に役立つ様々な製品も紹介しました。 今回は特別にセミナー登壇という貴重な機会もいただきました。「自動走行時代のサイバーセキュリティについて」というテーマで、 当社のサイバーセキュリティ実装事例などを取り上げながら、来るモビリティ社会における自動車のサイバーセキュリティの重要性について解説しました。   1.本格化するEVシフト 日本と同様、韓国でも今EVシフトへの動きが活発になっています。韓国の自動車メーカーは、次々とEV開発に向けての取り組みを進めており、会場でもEV関連ソリューションを展開する企業が多くみられました。 EVシフトは、世界的に主流となっています。欧州では今年3月、「2035年EV化法案」が合意され、内燃機関車の新車販売が2035年に全面禁止されるようになり、アメリカではEVを普及させることを目的とするEV購入者に対する税額控除制度が策定されるなど、政府主導で様々な取り組みが進められています。 日本でも2022年を境にEVの普及が大幅に伸びています。日本自動車販売協会連合会が発表した燃料別販売台数(商用車)によると、2021年のEVの新車販売台数は約2万1000台で、全体(約240万台)の約0.9%にとどまったのですが、2022年の場合1~9月までだけでも2万2234台となっており、全体の約1.34%に上昇しました。2022年の同期におけるアメリカ(約5.6%)と欧州(10.6%)のEV普及率に比べると、極めて低い水準ではありますが、今後さらなる拡大が予想されています。* 日本の自動車メーカーたちもそれぞれのEV戦略を進めています。日産は、EVを中心とした電動化を今後の戦略の中核とする「Nissan Ambition 2030」を発表し、2030年度までに19車種のEVを発表する計画を立てています。トヨタは「EVファースト」の発想を明らかにし、2030年までに電動化に対して最大8兆円を投資するなど、本格的なEV市場への参入を宣言しています。 このようにEV製品開発に拍車をかけているものの、従来の部品メーカーやサプライヤー業者の見直しなどが課題として残っているのも事実です。今後自動車業界がどう対応していくか、注目です。 *出典: EV DAYS https://evdays.tepco.co.jp/entry/2021/09/28/000020   2.急がれるカーボンニュートラルへの対応 自動車産業に「EVの普及」という大きな変化が起きている背景としては、世界共通の課題となっている「カーボンニュートラル」への動きなどが挙げられます。日本も2050年までにCO2の排出をゼロにすることを目指しています。 様々な産業からの取り組みが進められている中、自動車産業では、従来のガソリン車に比べてCO2排出量が少ないEVへの転換が加速化しています。日本におけるCO2排出量のうち、運輸部門からの排出が約17.7%というかなり大きな割合を占めているため、ガソリンから電気や水素などCO2の排出を最小限に抑えられる燃料に置き換えるという選択肢は避けられないものとなっています。 それにもかかわらず、日本は他の国と少し違う戦略をとっています。完全なEV化ではなく、エンジンとモーターを併用するHV(ハイブリッド自動車)やPHV(プラグイン・ハイブリッド自動車)を普及させる形で、実際に日本国内で普及している電動車の大半がHVやPHVです。その背景には、日本の自動車産業の構造にあります。自動車産業は日本の経済を支える基幹産業であり、ガソリン車からEVに置き換えられれば、エンジンなど多くの自動車部品が不要となり、部品サプライヤーに大きな打撃を与えてしまうことになるでしょう。 […]
2023年9月1日

V2Gとは?EVを電力インフラとして活用する「V2G」について

温室効果ガスの排出を減らし、全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」に日本を含む世界中の国々が参加し、実現に向けて取り組んでいます。カーボンニュートラル実現の影響は様々な産業に及ぼしており、発電においては化石燃料より再生可能エネルギー(太陽光、風力)を利用した発電、自動車産業では電気自動車(EV)の普及及び2035年からガソリン車の新車販売を禁止するなど、様々な産業で積極的に取り組んでいます。   その中でも注目を集めているのが電力インフラとしてEVを組み込む「V2G」(vehicle-to-grid)です。EVを蓄電池として利用するV2Gは再生可能エネルギーの課題を解決できる技術V2Gについて詳しく説明します。   V2Gとは?V2Hと何が違う? V2Gは電気自動車のバッテリーとスマートグリッド(Grid)を活用し、電力網インフラとして利用する技術のことで、電力会社の電力系統に接続して電気を相互に利用できる技術のことを意味します。 V2Gと似ている概念としてV2Hがあります。V2Hとは「Vehicle to home」の略語で、電気自動車と家庭で電力を充電・給電する技術です。V2Gと似ていますが、電力をやり取りする対象が違います。   V2Gが登場した背景は? カーボンニュートラルを実現するためには、再生可能エネルギーを使った発電は必須になりますが、重大な課題があります。それは「安定的な発電ができない」ということです。自然エネルギー(太陽光、風力)使うため、従来の発電に比べて不安定になってしまうことが解決すべき課題として残っています。その短所を補うためには、発電した電力を保存しておく大容量の「蓄電池」がどうしても必要になります。しかし、大容量の蓄電池を社会インフラとして構築するのは簡単ではなく膨大な資金が必要になるため、導入検討にも相当な時間がかかります。しかし、電気自動車の登場・普及により、社会インフラとして蓄電池を構築するのではなく、電気自動車を蓄電池として利用する動きが始まりました。    V2Gのメリットとは? 1.電力系統の安定化につながる カーボンニュートラルを実現するために、世界中で積極的に再生可能エネルギーの発電を取り入れている状況ですが、従来の発電と比べて安定ではないところが課題として指摘されてきました。電力供給が足りない場合、大規模停電が発生する可能性もありますので、需要量に合わせて電力を発電、送電する必要があるあります。しかし、再生可能エネルギーを利用した発電は天候によって発電量が急変するので、需給のバランスを保つことが難しいです。しかし、EVが電力系統に接続しやり取りできるV2Gを導入する場合、このような課題を解決することができます。具体的に説明しますと、EVを蓄電池として利用し、発電量が多い場合はEVに電力を保存しておき、発電量が少ない場合は系統に接続しEVの余った電力を供給することが可能になります。 2.電力企業とEV所有者にメリット 増える電力需要に対応するためには、より多い電力量を送電する設備が必要になります。その送電インフラ構築には多大な費用が掛かりますが、V2Gを導入することで費用を抑えることができ、柔軟に電力需要に対応することができます。また、EV所有者は電力系統に接続して余った電力を売ることで新しい収入源を作ることができます。 3.緊急時、バックアップ電力として利用 電力網に障害が発生したり、災害などの緊急事態が発生した場合、停電になる可能性も高くなります。しかし、V2Gに参加したEVがあれば、家庭や企業、重要なインフラに電力を供給することが可能になり、停電の備えとして活用することができます。 このように、V2Gは電力企業だけでなく、EV所有者にもメリットがあるといえます。では、日本のV2Gはどこまで来ているのか確認してみましょう。   日本におけるV2G取り組み 1.平成30年のEVアグリゲーションによりV2Gビジネス実証実験*¹ 東京電力ホールディングス株式会社と日立ソリューションズなど7社が参加した実証事業コンソーシアムです。現地実証を行うため、実証サイトを構築してV2G機器の動作検証や制御要件への適合性を確認する実証試験を実施しました。この実証事業では、EVが系統安定化(特にローカル系統安定化)に寄与する可能性が高いと判断し、それに関する制御システムの検証を行いました。今後、本実証試験で得られた成果と課題を踏まえ、オンラインので制御や複数サイトでの同時制御、SOC想定/計画の高度化検討などの実証事業の範囲を広げています。 2.V2G実証プロジェクトの概要について*² […]
2023年8月11日

車載セキュリティを確保するHSMとTEEとは?

自動車技術が急速に発展している現在、販売されている多くの自動車にはECUという電子制御装置が搭載されています。ECUはElectronic Control Unitの略語で、エンジンやトランスミッション、ブレーキなどのコア部品制御だけではなく、エアコンやドアロック、カーステレオなどの制御にも用いられているほど、今や自動車に欠かせないものになりました。自動車の性能やドライバーの利便性を向上させるECUですが、不正アクセスの入口として悪用される可能性もあります。それに対応するため、自動車業界では様々な対策を講じてきましたが、この記事では業界で広く使われているHSM(Hardware security modules)とTEE(Trusted execution environments)について紹介および説明します。   カーエレクトロニクスの発展とサイバー脅威の増加 自動車はエコ・自動化・電動化など、いわばCASEを中心に技術が発展しています。電子制御されている車両部品は車内ネットワークでお互いに繋がっているため、通信が適切な対策により保護されてないと車両はサイバー脅威にさらされて、サイバー攻撃の対象になる可能性があります。インフォテインメントシステム、Wi-Fi など様々なルートを利用して侵入できます。サイバー攻撃で自動車がハッキングされるとナンバープレート、車両位置、EVの場合は決済情報まで奪取される可能性が高いです。また、制御係のECUまで侵入して自動車を遠隔で操ることもできますので、運転している人の意志とは関係なく、事故を起こらせることも考えられます。そのため、CASEを実現するために、解決すべき問題はサイバーセキュリティの構築です。これからの自動車はあらゆるサイバー攻撃に対してサイバーセキュリティ対策を講じておくことが何よりも重要だと言えます。 幸いなことに、1950年代から自動車のサイバーセキュリティに関する議論が行われており、22年7月から国際法規として発行されました。国際基準を順守するために、自動車業界で様々なセキュリティソリューションを導入しています。その中でも、多く利用しているセキュリティ対策はHSMです。   HSM(Hardware Security Module)とは? ECUは車内ネットワーク通信で自動車制御を担うコア部品ですので、外部からの不正アクセスできないように保護する必要があります。特に車内ネットワーク通信データは暗号化されていないため、なりすましや改ざんのような悪意のある攻撃を受けやすいので、適切なセキュリティ対策が必要になります。この対策として用いられているのがHSMです。 HSMは欧州の先行研究であるEVITA(E-safety Vehicle Intrusion Protected Applications)プロジェクトによって策定されたハードウェア規格のことです。HSMは、ECUに外部からアクセスできない物理的な領域を割り当て、暗号化や復号化、鍵管理、認証などのセキュリティ作業を行います。物理的にHSMが盗まれない限り、サイバー攻撃でHSMで保管している暗号鍵を漏えいすることは非常に難しいため、安全に車内ネットワーク通信を利用することが可能になります。 また、EVITAでは各ECUに必要なセキュリティレベルを3段階(EVITA Full、EVITA Medium、EVITA Light)に分類して規定しています。分類基準はECUの機能及び通信対象によって違いますが、簡単に説明すると以下のようになります。 […]
2023年7月31日

「自動運転時代」が到来!運転時に免許証が不必要になる?

自動運転技術が普及している現状、車に搭載されたコンピューターが運転手の代わりに自動で運転操作してくれる未来が少しずつ近づいています。自動運転は、移動時の利便性の向上や車両交通事故の減少など、様々なメリットが期待されています。自動運転技術が急速に進む中、人が運転操作を行わない関係上、免許証が不必要になるのでは?とお考えの方も多いのではないでしょうか。この記事では、自動運転レベルの特徴や免許証が不必要になる自動運転技術について解説します。   自動運転時代が着々と進んでいる 車をカーライフの一部として現在も使用している方が多いでしょう。自動車業界でよく耳にする「自動運転技術」は現在販売されている各メーカーの自動車にも多数搭載されています。具体例としては、衝突被害軽減ブレーキや先行車との距離を一定に保ち走行する「ACC(アダプティブクルーズコントロール)」「LKAS(車線逸脱防止システム)」などが挙げられます。自動運転という言葉を聞くと、ハンドル操作を全自動で操作してくれる技術と勘違いされる方が多いですが、私達のカーライフの中で着実に進歩している技術に変わりありません。   「自動運転レベル」により免許証の必要条件が異なる 自動運転技術が目指す未来は「人が運転操作に関与しない完全自動化の運転システム」です。自動運転技術の進歩により、免許証の必要条件が変更される予定がありますが、自動運転レベルにより免許の有無が異なります。各自動運転レベルごとの特徴を以下の表でまとめました。   【自動運転レベル】 【自動運転レベルごとの特徴】 自動運転レベル1 運転支援システムによる車両制御を実施可能 自動運転レベル2 特定条件下において自動制御可能 自動運転レベル3 条件付自動運転可能 自動運転レベル4 特定条件下において完全自動運転 自動運転レベル5 完全自動化   免許証の有無については、大きく分けて以下2点です。 ・自動運転レベル1〜3までは免許証が必要 ・自動運転レベル4〜5までは免許証が不必要になる予定 自動運転レベル1〜3までの技術レベルでは、運転手の操作が必要なため「免許証の携帯」が必須になります。一方、自動運転レベル4以降では自動車の操作関係をシステムが全て代行するため、免許証は不必要になる予定です。自動運転レベル1〜2は「完全自動運転」ではありません。あくまで運転操作を支援する技術を搭載したレベルです。具体例としては、ハンドル操作や加速性能を支援する技術であり、ACC(アダプティブクルーズコントロール)やLKAS(車線逸脱防止システム)などが該当します。 自動運転レベル3は、運転操作を自動運転システムが行い、運転中の緊急時やシステム不具合時に運転手が操作するレベルです。自動運転レベル3は「高速道路などの特定走行場所のみ」で使用が許可されています。一般道や公道での走行は許可されていませんでしたが、2020年4月以降、一定条件下での自動運転車の走行が許可されました。道路交通法改正以降、自動運転レベル3に対応している車種は「アウディA8」のみとなっています。法改正や整備が進んでいる中、自動運転レベル3が国内自動車メーカーに普及するには、早くとも、もう3年以上の時間が必要になるでしょう。 […]
2023年7月17日

自動運転とEVの関係とは?エンジン自動車との違いも解説

自動運転のニーズが高まっており、2023年4月1日には「自動運転レベル4」が解禁されました。自動運転は、交通事故の減少・環境への負荷の軽減・移動の利便性向上など、多くのメリットが期待されています。自動運転とEVは互いに相乗効果を生み出すため、自動運転車はEVの普及をさらに促進する可能性があります。それゆえ、自動運転車が普及するためには、EVへのシフトが不可欠です。一方、エンジン自動車は環境への負荷が大きいだけではなく、自動運転に向いていません。それはなぜでしょうか。この記事では、自動運転とEVの関係や、エンジン自動車よりEVのほうが自動運転に適切な理由について解説します。   自動運転とEVの関係とは? 自動運転とは、人間の代わりに車が運転するシステムのことを指します。自動運転には、レベル0からレベル5までの5つのレベルがあり、レベル0は運転をすべて人間が行うレベル、レベル5は運転をすべて車が行うレベルです。自動運転とEVは、互いに良い影響を与える関係と言われていますが、その理由は何でしょうか?おもに次のような理由が挙げられます。 ・混雑した道路をよりスムーズに走行できる ・EVが搭載するバッテリーをセンサーなどに利用できる ・無駄な操作がなくなり省エネにつながる EVの自動運転車は、エンジン自動車の自動運転車に比べて、より細かく停止と発進を制御することができます。これは、EVの自動運転車が、エンジン自動車に比べて加速と減速が速いためです。また、EVの自動運転車は、停止している間もバッテリーの電力を消費しません。そのため、EVの自動運転車は、エンジン自動車の自動運転車に比べてエネルギーをより効率的に使用することができます。 また、EVのバッテリーは非常に大容量です。そのため、EVのバッテリーを各種センサーなどの電源として利用することができます。これにより、センサーの設置に伴う電力不足に陥ることはありません。また、EVのバッテリーをセンサーなどの電源として利用することは、省エネにもつながります。 さらに、EVの高度な自動運転車は、ドライバーが運転操作を必要としません。そのため、ドライバーの無駄な操作がなくなり、省エネにつながります。例えば、ドライバーは交差点の交差待ちや渋滞中などの際にアクセルやブレーキを頻繁に操作する必要があり、これらの操作はエネルギーの無駄遣いです。EVの自動運転車は、無駄な操作を必要としないため、エネルギー効率を向上させることができます。 EVと自動運転は、それぞれが単独であってもメリットがありますが、組み合わせることでさらに大きなメリットを得ることができます。EVと自動運転を組み合わせれば、交通社会は大きく変革し、より安全で効率的になることが期待されます。   エンジン自動車で自動運転はできない? では、エンジン自動車で自動運転をすればよいのではないかと思う方もいるでしょう。エンジン自動車も自動運転することは可能ですが、いくつかの課題を解決する必要があります。 ・エンジン自動車構成の単純化 ・大容量バッテリー エンジン自動車はエンジン、駆動系(パワートレインとも呼ばれています)部品、電装部品など、数多くの部品が使用されており、その構造はとても複雑です。自動運転車は周りの状況を確認できるセンサー、自動運転システムが組み込まれたECU等が必要になります。そのため、エンジン自動車を自動運転車に変えるためにはセンサーやECUなどを別途搭載する必要がありますが、現在のエンジン自動車の構造を変えて、追加部品を搭載することは簡単ではないことです。 また、自動運転のシステムは消費電力が大きいため、大容量のバッテリーが必要となります。エンジン自動車のバッテリーは小型のため、自動運転システムの消費電力に対応することができません。自動運転のシステムは、カメラなどの様々なセンサーを搭載しています。これらのセンサーは、周囲の状況を認識するために多くの電力が必要です。自動運転のシステムは車両を制御するためにも多くの電力を消費します。ゆえに、消費電力の点もエンジン自動車の課題の一つだと言えます。   自動運転が抱える課題とは? 自動運転はまだ開発途上にあり、本格的な実用化にはもう少し時間がかかります。現在の自動運転の課題は、大きく分けておもに次の3つがあります。 ・技術的な課題 ・法的な課題 ・社会的な課題 まず大前提となるのは、自動運転を実現させる技術力があるかどうかです。自動運転車を実現するためには、高度なセンサーやカメラ、AI技術などの開発が必要となります。これらの技術は、現代ではまだ十分に成熟しているとは言えません。 法的な課題については、自動運転車を走行させるための法律や規制の整備が必要なことです。現在、自動運転車を走行させるための法律や規制は整備されておらず、一般のドライバーが自由に自動運転車を利用できる状況ではありません。 […]
2023年6月13日

自動車の先端技術が見られる、「人とくるまのテクノロジー展2023横浜」出展レポート

全世界で脱炭素化が話題になっており、成し遂げようとする動きが加速している中、日本をはじめ多くの国が2050年のカーボンニュートラルを目指して取り組んでいます。自動車産業にもその影響が及ぼしており、世界各国の自動車メーカーはカーボンニュートラルのために自動車向けの新素材や電気自動車向け新技術などを開発しています。また、カーボンニュートラルと同じく、自動車産業に大きな変化をもたらしている潮流として、世界共通の課題となっているのが自動運転です。 自動車大国である日本も自動車の脱炭素化や自動運転に向けた技術開発が進んでおり、その成果を 「人とくるまのテクノロジー展 2023」で確認することができました。リアル開催が30回目となる今回は、日本を代表する日産、本田などを含む約500社が出展し、新型車や電気自動車に関する新技術やサステナビリティを実現に貢献できる技術、自動運転に必要なレーダー、ライダー及びテスティングソリューションなどを紹介しました。今年の展示会に去年より2万人が増えた約6.3万人が来場し、コロナ以前の規模に近づいた状況になりました。弊社は今年を含め、2年連続で出展して自動運転に欠かせない技術、自動車向けサイバーセキュリティを紹介しました。自動車がスマートになり、あらゆるものと連携されると自動車のサイバーセキュリティは何よりも重要になるでしょう。これからの自動車産業において最も重要になると予測されている自動車サイバーセキュリティを紹介したその現場を、これからお届けしたいと思います。  自動運転に欠かせないサイバーセキュリティ対策 国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)の参加国である日本も22年7月から新型車に対するサイバーセキュリティ構築を義務付ける規制を発効したため、これからの自動車産業においてサイバーセキュリティ構築は必要不可欠なものになりました。 弊社のブースでは自動車に対する国際規制、サイバーセキュリティ管理システム(CSMS)に対応するために必要なソリューションを紹介するため、自動車サイバーセキュリティ構築を主なテーマとしてブースの内容を構成しました。弊社のサービスを3つ(WP29コンサルティング、テスティング、ソリューション)に分けて、それぞれ当てはまるサービスを来場客に詳しく紹介しました。 WP29コンサルティングは自動車業界で最大の話題であるCSMS構築をサポートするサービスで、テスティングは構築されたセキュリティの有効性を確認するサービス、ソリューションは弊社の独自技術で完成した車載ネットワークセキュリティのことです。この中で、多くの来場客が興味を示したサービスはテスティングで、弊社が提供しているAutoCrypt Security AnalyzerやAutoCrypt Security Fuzzerに関して様々な質問をいただきました。自動車産業に関わっている企業である場合、国際規制であるWP29へ対応するため、CSMS構築が求められる可能性が高いです。したがって、OEMだけでなく、サプライヤーも、これからサイバーセキュリティのガイドラインを作り、国際規制へ対応していく必要があります。しかし、サイバーセキュリティ観点で組織、製品を分析、必要なセキュリティを構築するプロセス自体に慣れてない企業様も多いと思います。そのために、アウトクリプトは顧客の状況に合わせたカスタマイズサービスも提供しています。   自動車の企画から走行まで、3社共同でサポートする 今回はAUTOSARソフトウェアを開発するポップコーンザーとデジタルツインシミュレーション企業MORAIと共同出展し、これからの自動運転車及びSDV(Software-Defined Vehicle)の開発及びテスティング課題の解決に貢献できる共同サービスを紹介することもできました。自動車の企画段階からECU及び車載ソフトウェア、E/Eアーキテクチャの保護等に必要なツール(サイバーセキュリティ、AUTOSAR)を提供し、MORAIが提供するデジタルツインシミュレーションで自動車を実際と同じ環境で走行することが可能になります。共同サービスにより、国際規制へ対応と開発費用負担を大幅に減らすことが可能になると思われます。 幸いなことに、去年より多くの方々が同社のブースに立ち寄り、自動車サイバーセキュリティに興味を示しました。来場客の中ではOEM、サプライヤー、ソリューション企業も多かったので、自動車サイバーセキュリティが重要なポジションになっていると実感しました。 今回の展示会で日本の顧客とお話ができ、サイバーセキュリティの重要性と当社のソリューション及びサービスを紹介することができる良い機会だったと思います。今後も激変している自動車産業に合わせて、必要とされるソリューション及びサービスを開発・提供し、日本の「安心・安全な移動」に貢献していきたいと思います。また皆様にお会いできることを楽しみにしております。   今回の展示会で紹介したソリューション及びサービスの詳細は下記URLからご覧ください。 国際規制への完全対応サポート「WP29対応コンサルティング」 車載ネットワークセキュリティ「AutoCrypt IVS」 車載OSS脆弱性診断、自動分析ツール「AutoCrypt Security Analyzer」 […]
2023年5月19日

自動運転レベル4ついに解禁、自動運転と共に目指す未来モビリティ社会とは

自動運転は、自動車業界だけでなく主要な移動手段として世界中から注目されています。道路交通法の改正により、23年4月1日に解禁された「自動運転 レベル4」。これまでは高速道路などの公道でシステムが自動運転を行うレベル3までが認められており、常にドライバーの乗車が求められてきました。 日本の自動運転レベルが上がることでどのような変化が社会全体にあるのか、実際にレベル4を満たした事例をもとに解説します。また、今後の自動運転が目指す未来とその実現に必要不可欠なセキュリティについても説明します。   自動運転のレベルについて、自動運転レベル4への変化 自動運転では、車のハンドル操作やアクセル・ブレーキの操作をシステムに任せることを期待しています。それをどの程度までシステムに任せることができるかを示したレベルが自動運転レベルで表されています。 自動運転レベルはレベル0からレベル5までで6段階にレベルを分けています。レベルごとに運転手体が異なり、それも含めた観点で各レベルの概要を解説します。 出典:米自動車技術会(SAE) 自動運転レベル3ではドライバーの存在を前提としていましたが、2023年4月に解禁された自動運転レベル4では限定された条件下ではあるもののドライバーの介在が不要となるほどシステムによる自律的な自動運転を可能としており、大きな違いがあります。ドライバーレスを前提とした自動運転レベル4では、可能な限り安全性を高める必要があり、走行中は原則監視などを必要としませんが、実証や実用化初期においては遠隔監視・操作システムなどを導入するケースが大半です。そのようなハードルがあっても、ドライバーレスの特性は従来のドライバーにおけるコストを低減させることができるため、移動サービスや輸送サービス業界における自動運転レベル4の導入を目指す動きは活発です。 それでは、2023年4月の解禁後すぐに日本で初めて自動運転レベル4の認可を取得した例を解説します。   国内初!自動運転レベル4の実例紹介 2021年度より経済産業省と国土交通省が共同で進めてきた「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(以下、「RoAD to the L4」)」にて、福井県永平寺町で使用する車両について、道路運送車両法に基づく自動運転レベル4の自動運行装置として、国内で初めて認可されました。使用する車両は、走行環境条件の付与を受けた4台の7人乗り普通自動車で、自動運行装置が自動運転車両の周囲の状況を判断し、発進・停止等の運転作業や、緊急時等の自動停止等を実施できるよう、以下の装備が備えられています。 遠隔監視、周辺確認:前方・社内・側方カメラ、通信アンテナ 衝突回避:バンパースイッチ 位置,速度,方向指示:RFID読み取り装置 障害物検知:ステレオカメラ、ミリ波レーダー 雨滴・照度:環境センサ このような設備から、ドライバーレスでも安全面を担保した走行を可能にしていると判断されました。ちなみに運行区間は、福井県吉田郡永平寺参ロード:京福電気鉄道永平寺線の廃線跡地と、町道永平寺参ロードの南側一部区間:永平寺町荒谷から志比(永平寺門前)間の約2kmです。路面埋設された電磁誘導線も設備としてあわせもち、運行速度は時速12km以下で走行します。   日々進化する自動運転技術 ホンダが自動運転レベル3の市販車を発売し、メルセデスもレベル3提供をスタートさせています。アメリカや中国では自動運転タクシーが街中を走行し始めており、セーフティドライバーが同乗して運用されている車両が多いが、すでに「完全無人」の自動運転タクシーも登場しています。 また、Waymoは米アリゾナ州で2019年にドライバーが乗車しない完全無人化の自動運転タクシーサービスを開始しており、名実ともにレベル4を達成しています。米国では、カリフォルニア州でもWaymoとGM・Cruiseが自動運転タクシーのサービス実証を始めており、自動運転タクシーサービスの範囲を拡大しています。 […]
2023年4月25日

自動運転にはクラウドサービスが必要?活用事例と課題について

現在、自動車はWireless KeyやETC、GPSなど多くの通信で外部と繋がっており、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング&サービス)、Electric(電気自動車)のCASEを制す企業が2020年代以降の自動車業界を制す、と言われています。そのうちの一つである自動運転システムの進化に伴い、車内で生じる通信量は確実に増加しています。自動車の通信先も複雑化しており、今後も増加する通信に対してクラウドが着目されています。本記事では、自動運転と求められるクラウドサービスについて解説していきます。   自動車の通信先と通信方式 自動車の通信先は、V2X通信種別として大きく6つ(V2V,V2I,V2P,V2N,V2D,V2G)に分類されます。まず、それぞれの通信について簡単に説明します。 V2V:自動車と自動車間の通信。緊急車両存在通知などの機能がある。 V2I:路側機と自動車間の通信。右折時注意喚起や赤信号注意喚起などの機能がある。 V2P:歩行者と自動車間の通信。歩行者の存在を知らせる機能がある。 V2N:ネットワークと自動車間の通信。様々なクラウドサービスの機能を利用することで実現している。 V2D:デバイスと自動車間の通信。スマートフォンなどと車を接続する機能がある。 V2G:充電設備と自動車間の通信。充電の動作状況について通信を行う このうち、本記事ではクラウドサービスを介して通信を行うV2Nに着目することとします。まず、ネットワークという通信相手に対して、どのような通信方式で通信が実現されるのでしょうか。V2Nの中でも通信中継点により異なる通信方式を取ります。 充電ステーション:電力線通信 スマートフォン/タブレットなど:Bluetooth/Wi-Fi 基地局:セルラー通信(4G/5Gなど) このように、自動車から上記の通信方式で通信中継点を介してインターネットに接続し、通信相手のクラウドサービスと接続することができます。それでは、クラウドサービスと接続するV2N通信によりどのような機能を実現できるのでしょうか。具体的に、以下の内容を実現することができます。 OTA:セルラー通信を利用することで、遠隔地より電子制御システムのソフトウェアのアップデートを行う。 オペレータサポート:オペレーターのガイドにより、目的地や周辺のスポットの検索などの各種ナビゲーションを支援する。 状態監視:ドアこじ開けや衝突など車両の状態を遠隔で監視し、所有者や監視センターへ通知する 遠隔操作:充電、エアコン、ドアロックなどを遠隔で操作する 料金支払い:車両利用中に発生する様々な料金の支払い(高速道路・駐車場・ガソリンスタンドなど)を行う ルート検索:目的地へのルート検索(最短・最安ルートの検索)などを実施する このように、自動運転では膨大なデータ量を収集することができ、それを元に新機能として便利に自動車を利用することができるようになります。この収集した膨大なデータ量を収集/一時保管するために着目されているのが、クラウドサービスです。クラウドサービス上でこれらの情報を管理することで、周辺の渋滞情報など各種ナビゲーションを含む上記の情報が指定したユーザ 間で簡単に共有できるようになります。ただ、ネットワーク経由による情報処理/伝送遅延や必要情報取捨選択利用のしくみ・機能の開発、対象サービス規模拡張に見合ったサーバー能力・通信容量準備がV2Nによる情報利活用の課題として挙げられます。それでは、これらV2Nの課題に対して日本政府はどのような取組を実施しているのでしょうか。 […]
2023年3月27日

OTA(Over The Air)とは?ソフトウェア定義型自動車(SDV)に欠かせない技術

OTA(Over The Air)はスマートフォンや自動車などのデバイスのソフトウェアをデータ通信のような無線通信で更新、変更するプロセスのことです。OTAはソフトウェア定義型自動車(SDV)にとって欠かせない技術だと言っても過言ではありません。ソフトウェアによって自動車の価値が決まる時代に、タイムリーかつ安全なソフトウェアアップデート・管理が何よりも重要になるでしょう。そのため、世界各国の自動車メーカーはSDV開発やOTA適用に熱心に取り組んでいます。ユーザから取得するデータを活用し、低負荷で高付加価値な機能をタイムリーに提供できることが最大のポイントであるSDV。本記事では、SDVの国内外の状況やSDVにて重要といわれているOTA(OTA)について説明します。   ソフトウェア定義型自動車(SDV)への関心が高まる 従来、顧客が車に求めたのはハード面的観点である「外形・色・内装のデザイン」でしたが、近年求められているのはGPSによる地図表示と道の案内、センサーによる事故防止機能などドライバーを支援するソフト面的観点の機能に変わっています。これより、自動車メーカーは「各種センサー・カメラ・レーダー、距離計測デバイス」などの機能を付加することに主眼を置いたソフトウェア定義型自動車(SDV)の開発を進めています。自動車の開発の軸は、従来のハードウェア中心主義から付加価値を決められるソフトウェア中心へとシフトしています。ユーザから取得するデータを活用し、低負荷で高付加価値な機能をタイムリーに提供できるような進化した自動車が実現する世界が近づいています。 トヨタ自動車では、増加するソフトウェアのニーズにこたえるため、オープンソフトウェア(OSS)をより多く採用し、開発されたシステムに統合しています。具体的には、顧客に求められる機能を実現するため、コネクティビティユニット、インフォテインメントシステム、自動運転システムなどのより高度なシステムの開発を実施しています。2018年発売のトヨタ自動車「カムリ」は自動車産業を対象としたOSSの一つ、AGL(Automotive Grade Linux)を採用しており、車載インフォテインメントシステムに焦点をあてています。 ちなみに、OSSのセキュリティに関する記事「自動車の機能を決める鍵、ソフトウェアの開発におけるセキュリティ」もありますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。   SDVに関する国内外の状況と国際法規 先述の通り、特定のハードウェアに合わせてソフトウェアを個別に開発してきた既存の自動車と異なり、開発したソフトウェアを様々なハードウェア上で実行できるような自動車が注目を集めています。テスラでは、今後の収益の柱としてエンタメや保険の領域を拡大し、同時に無料提供領域のUX向上を図っています。これはたとえば自動運転のハンズオフ走行が可能になった時、あるいは充電待ち時間にエンタメにより車内体験を向上させることが可能になると容易に想定されます。このように新興自動車メーカーでは、SDV化に向けた基盤を構築済みです。一方で従来自動車メーカーは2025年頃に内製ビークルOSを実装・拡充する予定となっており、新興自動車メーカーとは3~5年ほどのギャップが既に存在しています。 自動車産業を対象としたOSSは多く使用されていますが、OSSの脆弱性が車載システムへの攻撃を引き起こした事例も数多くあります。そのうちの一つ、Tesla(テスラ)「モデルS」に対するハッキングを紹介します。まず、車載システム(Linux)のOSSであるWebブラウザ上に存在した脆弱性により、攻撃者がブラウザ権限を獲得したことで、攻撃者がターゲットシステムにアクセス可能となってしまいました。その後OSSであるLinuxカーネルの脆弱性によって攻撃者が管理者権限を獲得し、ターゲットシステムが乗っ取られました。管理者権限を獲得することで、攻撃者がCANパス上で任意のメッセージをリモートで送信し、様々な車両機能に影響を与えるエントリポイントになりました。 このような車両へのサイバー攻撃による被害を防ぐため、2021年に車両のサイバーセキュリティ及びサイバーセキュリティ管理システムを定めた国連のサイバーセキュリティ法規(UN-R155)が発効されました。日本はこの発行を受けて、2022年7月より自動運転や無線によるソフトウェア更新機能を持つ新型車を対象に適用義務を決めました。また、UN-R155と同時に発効された車両のソフトウェアアップデート及びソフトウェアアップデート管理システムについて定めたUN-R156についても同様に重要な法規とされています。これは自動車の安全なソフトウェアアップデートを評価するための要求事項をまとめたプロセスであり、以下の2つのステップが定められています。 プロセス審査 ソフトウェアバージョン管理、ソフトウェアアップデート時の安全性の確保など、自動車の開発から製造、利用、廃棄までの一連のライフサイクル全体で安全なソフトウェアアップデートができるように適切なプロセスが構築され、管理、運用されていることを確認します。 車両型式審査 プロセスが適切に運用され、車両のSU(Software Update)性能が確保されていることを確認します。 このように、世界の自動車産業はSDVに向けて、様々な技術を自動車に適用し、想定されるリスクに対応するため国際レベルでの法規も作っています。では、OTAを自動車に適用することで、どのようなことが便利になり、注意すべきポイントには何があるか説明していきます。   自動車の利便性を高めるOTA、注意すべき点は? ディーラーで修理していた不具合をカーナビの画面上から更新できるようになるOTA(Over the Air)。無線通信でデータを送受信することで、車載コンピュータのソフトウェア更新を行う手法として知られています。従来は、メーカーが媒体等でディーラーに更新情報を配布し、ディーラーに車を持ち込むことで整備士が手動で更新を実施していました。しかし、OTAを用いたら、メーカーがクラウドのOTAセンターに登録し、OTAによる配信を受けることで自動車のソフトウェアを更新することが可能になります。これによって、自動車の利便性は向上し、ユーザの管理負担だけでなく、メーカー側の負担も削減できます。 […]
gdpr-image
当ウェブサイトでは、お客様のニーズに合ったより良いサービスを提供するために、クッキーを使用しています。詳細については「個人情報の取り扱い」をご確認ください。