2024年5月20日

車載ソフトウェアの標準仕様AUTOSARとは?基礎説明から導入時のポイントまで

百年に一度の大変革期を迎えている自動車業界において、技術の進歩は目まぐるしい現状となっています。今や自動車は”走るコンピュータ”と言われることもあり、約200個のECU※が搭載されています。そのECUを動かすのに欠かせないものがソフトウェアです。 技術が進歩する一方で、ソフトウェアが複雑化することが大きな課題になっています。この課題を解決すべく、自動車の制御ソフトウェアの標準化活動を実施し、車載電子制御ユニット用の共通標準ソフトウェアアーキテクチャを策定、確立したのがAUTOSARと呼ばれるソフトウェア規格です。今回の記事では、自動車ソフトウェアの標準仕様であるAUTOSARについて説明します。 ※Electronic Control Unitの略称。車載に搭載される電子制御をするユニットを指す。   AUTOSARとは 正式名称AUTomotive Open System ARchitecture (以下、AUTOSAR) は、2003年に発足した自動車業界のグローバル開発パートナーシップです。活動の目的は、インフォテインメントを除く領域で、車載電子制御ユニット用の共通標準ソフトウェアアーキテクチャを策定、確立することになります。さまざまな車種やプラットフォームに対応できる拡張性、ソフトウェアの可搬性、可用性への配慮、安全要求への対応、多種多様なパートナーとの協業、天然資源のサステナブルな利用、車両の「製品ライフサイクル」 全般にわたる保守性などを目標としています。   AUTOSARのソフトウェアアーキテクチャ構造 AUTOSARのアーキテクチャは、次の3つの階層で構成されています。 ①Basic SoftWare (以下、BSW) 上層ソフトウェアの機能を動かすための必須サービスを提供する標準ソフトウェアモジュールです。ほとんどの場合、BSWには以下に述べるアプリケーション層のような機能は存在せず、その名の通り、ソフトウェアの基本となる部分です。 ②Run Time Environment (以下、RTE) アプリケーションソフトウェアのECU内、ECU間通信をネットワークトポロジーに依存せず抽象化するための中間層です。BSWと以下に述べるアプリケーション層を仲介する役割をしています。 […]
2024年3月26日

自動車の発展、E/Eアーキテクチャの変化について

自動車電装とはE/E(Electrical&Electronic)、自動車の電気及び電子装備のことを示します。各種モーターやセンサー、制御装置、操作スイッチ、ブラックボックス、カメラを含む電気系部品や装備がこれに該当します。SDVの本格化により、自動車電装分野は業界内でもこれから伸びる産業として注目されています。そしてE/Eアーキテクチャとは、自動車内部の様々な装置を管理するために搭載されている各種制御機やケーブルなどの設計構造として定義されています。つまり、車両に搭載されているE/E装置をつなぐシステムのことを意味します。今回は、E/Eアーキテクチャの発展プロセスについて取り上げながら、次世代E/Eアーキテクチャが今後どのように変化していくかについて解説します。   分散型アーキテクチャ(Distributed Architecture)とは 昔の車は、ただ移動するための手段に過ぎませんでした。車両に搭載されるコンピューティング要素と言っても、モーターの制御を含む車両動作関連のECU(Electronic Control Unit)程度であり、この時の自動車は動力機関や安全性などによって車両の性能が決定されました。当時は、車両に搭載されるECUの数が少なかったため、一つの機能を提供する低い性能のECUを複数搭載することで、車両製造のコストを下げるとともに、エンジン制御、ブレーキ制御など、機能ごとに最適化されたECUを配備することができました。 しかし、自動車の電子化に伴い、自動車の快適性や利便性を向上させるための様々な機能が搭載されるようになりました。例えば、運転者に情報や娯楽を提供するインフォテイメント機能や温熱シートなどが開発され、これらの機能を実行するECUが必要となり、自動車メーカーは必要とされるECUを追加し続けることで車両アーキテクチャを構成していきました。 出典:ECUの平均搭載数の増加推移 上のグラフを見ると、自動車の機能が複雑になるにつれて車両に搭載されるECUの数がますます増えているのがわかります。実際、高級車の場合には100個以上のECUが搭載されるともいわれています。このように複数のECUを用途に応じて車内各所に配置したアーキテクチャを「分散型アーキテクチャ(Distributed Architecture)」といいます。 図1.分散型アーキテクチャ 出展:https://www.hyundai-kefico.com/en/future-tech/modular-architecture/content.do 分散型アーキテクチャでは図1のように、車両全体において、複数のECUが配置されている構成となっているのがわかります。 ECUの配置における基準は特になく、機能が追加されるたびにその機能を提供するECUを搭載していくため、このような複雑な構成を見せています。 分散型アーキテクチャの問題点としては、必要に応じてECUを搭載していくため、重複した機能を持つECUも存在すれば、不要な機能がそのまま残っている場合もあるということが挙げられます。こうなると、特定機能をアップデートする際には、当該機能と関連しているECUがどこに配置されているのかを見つけ出し、機能をいちいち比較しなければなりません。このアーキテクチャは車両機能の拡張性に限界があり、用途も限定的ということから、後述するドメイン型やゾーン型アーキテクチャへの移行が求められるようになりました。   ドメイン型アーキテクチャ(Domain Architecture)とは 従来の分散型アーキテクチャの課題を解決するために新しく提示されたのが「ドメイン型アーキテクチャ(Domain Architecture)」です。 図2.ドメイン型アーキテクチャ 出典:https://www.hyundai-kefico.com/en/future-tech/modular-architecture/content.do ドメイン型アーキテクチャでは、自動車の機能に基づいて、複数の関連機能が一つのドメインコントロールに統合されます。一般的にパワートレイン系、ボディ系、シャシ系、インフォテイメント系といった複数の機能単位(ドメイン)で分類されます。これらのドメインの制御を1つのユニットで統合することで、異なるサブシステム間の通信とデータ交換を最適化する、ドメイン制御ユニット(DCU)による集中型アーキテクチャが可能になります。ドメイン型アーキテクチャは、分散型アーキテクチャと比べ機能アップデートが容易になることから、現在多くの車両で採用されています。しかし、自動運転の到来が加速している現在、ドメインにフォーカスした従来のアーキテクチャは限界を迎えつつあります。その理由としては、2つほどが挙げられます。 1つ目に、自動運転技術の発展に伴い、車両に搭載すべき装置が爆発的に増加していることです。自動運転機能を実装するための装置は増える一方で、その装置が機能単位で縛られることによって物理的な限界が生じるようになりました。例えば、特定のドメインを管理するDCUが車両後部に配置されているとしましょう。そして、このドメインに属する装置が車両の前部に搭載されているとしたら、機能単位で分類するドメイン型アーキテクチャでは、どうしても前部の装置と後部のDCUをつなぐためのケーブルが必要になります。このようなケースが多くなると、車両のケーブルの重量と長さが耐えられないほど増えてしまいます。実際、車両ケーブルの重量および長さは車両の単価、燃費、重量に影響を与えるため、自動車設計時に非常に重要な要素となります。 2つ目に、自動運転を可能にするためには、自動車に搭載されている全ての装置間の情報共有が必須であるということです。ドメイン型アーキテクチャでは、車両装置を機能に基づいて分類しているため、機能のアップデートには最適であるものの、他のドメインに属している装置との情報共有に問題が発生する恐れがあります。 […]
2024年2月21日

SDV(ソフトウェア定義型自動車)への進化による自動車のリコールの変化

近年、自動車のリコールが世界的規模に拡大されています。2023年12月、アメリカでテスラ(※1)が高度運転支援システムの「オートパイロット」の機能に潜在的リスクが発見されたとして、過去最多の200万台の大規模リコールを発表しました。また2023年2月、トヨタ自動車(※2)は衝突被害軽減ブレーキが作動しない恐れがあるとして、約19万台のリコールを国土交通省に報告しました。これらのリコールの特徴は、ソフトウェアの不具合で発生したリコールという点です。 自動車の機能をソフトウェアが左右するといっても過言ではない時代になっています。自動車が走るコンピュータに変化するにつれて、リコールの傾向も変化しています。ソフトウェア更新で対応可能になり、売店に入庫したりディーラーに連絡することなく、ユーザが自分で対応可能になっていることから、これまでのハードウェアの不具合による自動車のリコールとは明らかに違います。今回は、自動車リコール制度というものを説明しながら、SDV技術の発展で発生するソフトウェアリコールについて詳しく掘り下げていきたいと思います。 ※1出典: https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231214/k10014287821000.html ※2出典: https://toyota.jp/recall/2023/0216_2.html   自動車のリコールの変化 自動車のリコール制度は自動車の設計・製作上の不具合による事故や、故障、公害の未然防止を図るため、自動車メーカー等が不具合のあった型式の自動車に対して改善措置を行う制度です。(※3) ※3出典:政府広報オンライン:https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201202/1.html 自動車安全基準の不具合が見つかったら自動車メーカが自主的にリコールを行う場合もあれば、国土交通省(アメリカの場合は米道路交通安全局(NHTSA))のような交通安全をつかさどる機関からの命令によるリコールが実施される場合もあります。もともとは、ハードウェアの問題によるリコールが多かったです。矢野経済研究所が調査したレポート(※4)によると、2020年の世界のリコールの比率はハードウェアのリコールが60%で、ソフトウェアのリコールが40%程度でした。それが、ソフトウェア中心のSDVへ進むにつれ、2025年にはソフトウェアのリコールが60~70%まで拡大し、ハードウェアを上回ることが予測されています。 実際、テスラのリコールの90%以上はソフトウェアのアップデートで簡単に処理できるという調査結果もあります。 ※4出典: 「2020年版 車載用ソフトウェア市場分析 VOL.1 分析編 ~CASEで変わるクルマの開発・製造とソフトウェア市場2030年予測~」   ソフトウェアリコールの流れ ソフトウェアのリコールは、OTA(Over the Air)によるソフトウェア更新と同様で、無線ネットワークによるソフトウェアやファームウェアアップデートでリコールを実施できます。OTAによるソフトウェア更新を可能にするためには、自動車に4Gや5G、またはWi-Fiのような通信方式に対応するTCU(テレマティクスコントロールユニット)や、走行データや車両データを保存するメモリーが組み込まなければなりません。ソフトウェアリコールの際、自動車メーカーはクラウド基盤サーバーからソフトウェアパッチを車両に配布し、車両はそのパッチを自動的にダウンロードおよびインストールを行います。そしてパッチが正常にインストールされると、車両はOEMのバックエンドに更新状況を報告し、ソフトウェアリコールの一連の作業は終了になります。   ソフトウェアリコールのメリット OTA技術によるソフトウェア更新は自動車メーカーと車両の所有者の両方に効率性と便利さをもたらしています。ソフトウェア更新で車載システムのエラーが簡単に修正できるため、自動車メーカーはリコール作業を担当していた自動車ディーラーにおけるメンテナンスと人件費の削減ができ、車両の所有者は販売店やディーラーに連絡することなく自らリコール対応できるので費用や時間を軽減できます。   解決すべきソフトウェアリコールの課題 […]
2024年2月8日

「第16回 オートモーティブワールド」出展レポート

これからの自動車はスマートフォンやパソコンと同様に、車両の内部に搭載された通信機器によって車と車、クルマとデバイス、クルマとインフラなどがネットワークを介して連結されると予測されています。外部接続に対応する自動車は完全なる自動運転が可能になり、社会的には交通事故の減少、渋滞の緩和、運転手不足の解消などのメリットがあり、人には運転操作から解放されて自由に過ごすことが可能になるメリットがあります。多くのメリットを持つCASE時代のクルマを開発するために、最も重要だと言われているのがソフトウェアです。世界の自動車産業の潮流と同じく、日本の自動車産業もソフトウェアに対する姿勢が変わりつつあります。その姿勢が確認できたところは、2024年1月24日~26日、東京ビッグサイトで「第16回 オートモーティブワールド」-クルマの先端技術展でした。 日本を代表する産業の1つとして言われている自動車産業に関する先端技術分野の世界最大の展示会であるため、世界中から注目を集めました。また、今回の展示会でソフトウェアデファインドビークル(以下SDV)に焦点を当てたSDV EXPOが初開催されるなど、最新動向も反映した展示会でした。その結果、出展社数は前回より300社が増えた約1,700社が出展、来場者数も約7.8万人に上りました。弊社も世界最大級の展示会に出展し、国際法規を守りながら安全なクルマ作りに必要なサイバーセキュリティ技術やセキュリティテストツールを紹介することができました。 では、これからの自動車産業において最も重要になると予測されているSDVに必要なサイバーセキュリティを紹介した現場をお届けしたいと思います。 高まるサイバーセキュリティの重要性 SDVにとって最も重要なのはソフトウェアですが、それに次いで同様に重要な分野があります。それはサイバーセキュリティです。UNECE WP29で採択された国際法規「UN-R155」により、自動車メーカーは車両のライフサイクル全体をカバーするサイバーセキュリティを構築する(CSMS)必要があり、開発されたソフトウェアが安全であるかを検証することが求められています。そのため、ファジングテストを利用したソフトウェアやECUの脆弱性検知、OSS管理ツールを利用したSBOM作成などが業界で広く使用されています。日本の自動車業界では、このような分析ツールやサービスの導入があまり進んでいないのが現状です。当ブースにご来場いただいた自動車業界に携わっている多くの方々も組み込みソフトウェアの脆弱性検知やサイバー攻撃を防御する対策に関する悩みを抱えていました。 最近のソフトウェア開発にはOSSも多く使われているため、脆弱性だけでなく、ライセンスに違反があるかどうかを確認することも重要になっています。しかし、ソフトウェアに使用されたOSSをライセンス違反まで管理することは難しく、適用されたセキュリティの安全性を検証することも相当な時間が必要な作業です。弊社の「AutoCrypt Security Analyzer」と「AutoCrypt Security Fuzzer」はこのような現場の悩み・課題を解決するために開発されたセキュリティテストツールです。自動化された管理機能を提供していますので、効率的なセキュリティ検証環境の構築をサポートします。 SDVフォーラムに登壇し、サイバーセキュリティと国際法規について解説 今回の展示会では、ただサービスやソリューションを紹介するだけではなく、SDVフォーラムに登壇してSDVに必要なサイバーセキュリティと国際法規に関するセミナーを行いました。主催者側から準備してくれました50席が満席になり、セミナーの後半には通路に立ってセミナーを聞いている方もいましたので、日本もSDVへの関心が高まっている一方で、自動車セキュリティや国際法規に関する多くの懸念を抱えている企業様がまだ多いと実感しました。 上記にも述べましたが、SDVもUN-R155の影響を受けるため、適切なセキュリティ対策を構築する必要があります。弊社は車種に合わせてサイバーセキュリティを企画、構築、テスト及び検証など、国際法規が求めている要件を満たすために必要なサービスを一気通貫で提供しているため、企業様のニーズに応じたサイバーセキュリティを構築することが可能です。車両ライフサイクル全体にわたる必要なサイバーセキュリティ構築ソリューションはこちらをご覧ください。 最後に インタネットを介して繋がっているコネクティッド・カー、いつでも車のソフトウェアをOTA(Over The Air)でアップデートできるSDV、常にあらゆるものと通信を行っているため便利だと言えますが、その分ハッカーから狙われやすくなります。サイバー脅威からクルマを守るために必要なセキュリティ対策は、今まで述べてきた脆弱性の検知・管理するツールだけでなく、持続的に自動車のセキュリティ状況を把握できるシステム(車両SoC)や車両ネットワークへ侵入する不正アクセスを検知・遮断する(IDSとIPS)セキュリティ対策など、考慮すべきポイントがたくさんがあります。セキュリティ対策の構築に慣れていない企業様は「どこからサイバーセキュリティを適用すればいいか、構築したセキュリティが国際法規の基準を満たしているか不安」という不安や悩みを抱えていると思われます。 弊社は2007年から17年間、自動車のサイバーセキュリティを研究・開発してきた弊社はSDVに必要なサービスも提供しています。脆弱性検知・管理するツール以外にも、車載ネットワーク・ECUへの侵入監視・防止システム「AutoCrypt IDS」、 セキュアなV2X通信をサポートするソリューション「AutoCrypt V2X-EE」、PKI基盤のセキュリティ証明書管理システム「AutoCrypt V2X-PKI」など、車両に必要なサイバーセキュリティは全てそろっており、お悩み事や不安なことを解消できるサービスやコンサルティングを提供できる豊富な経験を持っています。 幸いなことに、初めての出展にもかかわらず、多くの方々が弊社のブースに立ち寄り、自動車のサイバーセキュリティに関心を示しました。来場客の中ではOEM、サプライヤー企業様が多かったので、サイバーセキュリティに対する認識が高まっていると実感しました。第16回 […]
2024年1月8日

車載ソフトウェア開発に用いられるモデルベース開発とテスト、All about 「V字モデル」

V字モデルについてご存知でしょうか。主にソフトウェアの開発やテストにおいて用いられる一般的な手法として知られていますが、近年自動車に搭載されるソフトウェアが増加しており、自動車開発の際ソフトウェアの開発プロセスの一つであるV字モデルの採用が加速しています。今回は、ソフトウェアプロセスの一つである「V字モデル」についてご紹介します。   ソフトウェアプロセスとは? ソフトウェアがますます複雑になり、 開発期間や工数がかかり費用も増加する反面、ソフトウェアの品質における信頼性が低下するという状態を「ソフトウェア危機」と呼びます。「ソフトウェア危機」という言葉は、NATO(北大西洋条約機構)科学委員会主催の「NATOソフトウェアエンジニアリング・カンファレンス」で、ミュンヘン工科大学教授のフリードリッヒ・L・バウアー(Friedrich Ludwig Bauer)によって初めて使われたもので、このソフトウェア危機を克服するために、登場下概念が「ソフトウェアプロセス」です。 ソフトウェアプロセスとは、ソフトウェアの欠陥が原因で発生しうる事故を減らし、ソフトウェアの危機を回避を実現できるソフトウェアエンジニアリング手法の一つです。ソフトウェアシステムの開発に必要な活動や関連情報を段階別に分けて、ソフトウェアの開発、配布、運用のそれぞれのプロセスで実施すべき活動を定義したもので、ソフトウェアプロセスに沿って開発することになれば、修正や再開発の可能性が減ることになることから、ソフトウェアの開発時によく採用されています。 (ソフトウェアプロセス: https://www.itmedia.co.jp/im/articles/1109/09/news135.html)   V字モデルとは? (出典:V字モデル、ウィキペディア) V字モデルとは、システム開発の開始から終了までのプロセスのことで、ウォーターフォールモデル(要求定義‐ソフトウェア設計‐ソフトウェア実装‐テスト‐メンテナンス)の進化版ともいわれ、アルファベットV字のように見えることからV字モデルといわれます。 V字モデルの左側は「開発工程」で、V字の下の方へ工程が進み、ソースコードの作成まで済んだら開発工程は終了になります。その後、V字の右側であるテスト工程に移動していきます。V字モデルでは、ソフトウェア開発の各段階において、その上位の成果物や情報を文書化しながらプロセスを進めていきます。 (出典:ASPICE公式HP) 自動車エンジニアリング分野で広く採用される開発プロセス評価モデルである「A-SPICE」は、 典型的なV字開発モデルに基づいています。要求定義(左側)と受け入れテスト(右側)、基本設計(左側)と結合テスト(右側)、詳細設計(左側)と単体テスト(右側)がそれぞれ対応します。つまり開発工程に対応しテスト工程が決められており、実施するテストの内容が明確になります。要求定義の内容を受け入れテストで、基本設計の内容を結合テストで、詳細設計の内容を単体テストでそれぞれ確認でき、各テストで開発工程で実施した内容が正しく実装できているかを検証することができます。その上、V字モデルは、ソフトウェアの開発初期の段階からテスト計画が同時に作成されるため、迅速にプロセスを経ることができ、順次開発成果物を検証・確認することでエラーを減らし、ソフトウェアの品質向上にもつながります。 (出展: https://www.autocrypt.jp/sdv/) WP29の参照先となるISO/SAE 21434では、OEMやサプライヤー向けに製品開発サイクルでV字モデルを適用させる形で高度のセキュリティを実装し、持続的なサイバーセキュリティを実現することを要求しています。アウトクリプトは、車載ソフトウェアの品質向上を実現するために、このV字モデルに基づいてCSMSコンサルティングを行っております。ソフトウェアプロセスの各段階に必要とされる製品やソリューション、テストなどを提供し、車両型式認証に求められるコンプライアンス遵守をサポートします。 アウトクリプトが提供するCSMSコンサルティングの詳細は、こちらのページからご覧いただけます。 https://www.autocrypt.jp/sdv/   原文: […]
2023年5月12日

【ホワイトペーパー】SDVの実現に向けたサイバーセキュリティ構築戦略

2023年5月11日

アウトクリプト、車両/部品における鍵管理統合ソリューション「AutoCrypt KEY」の提供開始

自動運転セキュリティ及びMaaSソリューションを手掛けるアウトクリプト株式会社(AUTOCRYPT Co., Ltd.、本社:韓国ソウル、代表取締役 金・義錫、以下アウトクリプト)は、自動車及び部品製造プロセスにおいて暗号鍵を効率的、かつ安全に統合管理できるソリューションである「AutoCrypt KEY」の提供を開始します。 近年、世界中でコネクテッドカーや電気自動車(EV)の普及が進むなど、自動車業界のパラダイムシフトが加速しています。車載部品の数と種類の増加とともに、電動化や自動運転に伴う車載システムの複雑さが増している中、車両の観点だけでなく、部品単位のセキュリティ対策の重要性がますます高まっています。特に、自動車には周りの車両やインフラをはじめ、EV充電器、モバイルデバイスなどと接続するための様々な通信モジュールや部品が搭載されているため、製造工程におけるセキュリティの取り組みは必須です。製造プロセスにおいてセキュリティポリシーを含むファームウェアと、固有の暗号鍵を書き込み、ハードウェアとユーザー、サービスの3者がお互い識別できるよう、暗号鍵を用いた安全なセキュリティ基盤を採用することになりました。  アウトクリプトは、当社が提供している鍵管理システムKMS(Key Management System)を基に、公開鍵・秘密鍵、PKI、HSM基盤鍵管理、QRNGによる量子乱数生成、暗号化、各種署名書、電子署名など、鍵管理に必要な様々な機能を提供します。また、鍵管理における自動車メーカーと各サプライヤー間管理体制を統合させ、更なる安全性と効率性の向上を支援します。  一方、当社は車両セキュリティに関する国際標準であるWP29 UN-R155/156及びISO/SAE 21434など様々な規制への対応を支援しており、現在、バッテリー管理システムやADAS( 先進運転支援システム)など部品メーカーと協力するなど、顧客基盤を拡大しています。  アウトクリプト代表取締役 金・義錫は、次のように述べています。  「車載システムが更なる高度化を実現するためには、設計段階からセキュリティを意識しなければなりません。まさに、自動車のサイバーセキュリティは今自動車メーカーにとって最重要課題になりつつあります。複雑化しているサイバーセキュリティ対策の解決策として、製造段階における安全な鍵管理基盤システムを構築することは、大事な一歩になると考えております。  AutoCrypt KEYは、当社の暗号化技術力及びノウハウが詰まった鍵管理統合ソリューションであり、自動車メーカー及び部品サプライヤーが安全かつ効率的に暗号鍵基盤車両アーキテクチャを実装できるよう支援していきます。」 
2023年4月25日

アウトクリプト、ポップコーンザー・ジャパンと「人とくるまのテクノロジー展2023」に共同出展

自動運転セキュリティ及びMaaSソリューションを手掛けるアウトクリプト株式会社(AUTOCRYPT Co., Ltd.、本社:韓国ソウル、代表取締役 金・義錫、以下アウトクリプト)が株式会社ポップコーンザー・ジャパン( PopcornSAR Co., Ltd.、代表者:チェ・スンヨプ、以下ポップコーンザー)と、2023年5月24日(水)~26日(金)に開催される「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」に共同出展します。 SDV開発の加速化により、ソフトウェアとコネクテッド技術の重要度がますます高まっている中で、今回は自動車サイバーセキュリティ分野に強みを持つアウトクリプトと、スタートアップ企業としては世界初でAUTOSAR標準技術を保有しているポップコーンザーが共同出展し、SDVの高度化及び実用化に向けたサイバーセキュリティソリューションとAUTOSAR基盤を活用したSWアーキテクチャを展示します。 ブースでは、アウトクリプトのサイバーセキュリティ技術とポップコーンザーのAdaptive AUTOSAR(R20-11)を適用したADAS/自動運転の開発、テスト、評価シナリオの提供をデジタルツイン上でシミュレーションするコラボデモも行う予定です。   「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」展示会概要【リアル展示会】   会期:2023年 5月24日(水)~5月26日(金)会場:パシフィコ横浜開催時間:10:00~18:00(最終日は17:00まで)参加方法:参加無料(事前登録制)ブース番号:240事前登録URL:https://aee.expo-info.jsae.or.jp/ja/registinfo/ 【オンライン展示会】  会期:2023年5月17日(水)~6月7日(水)会場:https://aee.expo-info.jsae.or.jp/ja/yokohama/   ■アウトクリプト x ポップコーンザー出展内容について   1.UNECE WP29法規対応コンサルティングサービス アウトクリプトでは、自動車サイバーセキュリティ認証に関わるCSMS構築及び車両型式認証の取得を支援する包括的なコンサルティングサービスを紹介します。顧客がWP29 […]
2023年2月7日

「オートモーティブワールドレポート」日本の次世代モビリティ技術とは

世界の自動車産業が変化しています。ガソリンを使うエンジン自動車からハイブリッド車(HEV、PHEV)や電気自動車(EV)へ、直接運転から自動運転へ変わりつつあります。自動車の部品も、産業変化に合わせて進化しています。自動運転に必要なソフトウェアや自動車セキュリティサービス、電子化や電動化された部品などが次から次へと開発されています。 自動車大国である日本でも、その変化が見られました。今回、日本の自動車産業の変化を見られた場所はオートモーティブワールド展示会でした。オートモーティブワールド展示会はカーボンニュートラル、電子化・電動化、自動運転、コネクティッド・カー、軽量化など、クルマの先端テーマの最新技術が確認できるところです。東京のビックサイトで開催された、第15回目を迎えたオートモーティブワールドは前期より2倍以上である約7.5万人が展示会に参加し、出展社も1,400社を超え、日本最大の自動車技術展といっても過言ではない大規模の展示会になりました。 オートモーティブワールドは自動運転、MaaS、コネクティッド・カー、カーエレクトロニクス、xEV技術、車の軽量化、車ぶ部品&加工EXPOに構成されており、その全体を総称する言葉として使われています。展示会の入り口から自動車向けのサイバーセキュリティに関する広告を見られました。それほど、自動車のサイバーセキュリティが重要な分野になっていることが実感できました。これから当社が視察してきました展示会当日の様子をお届けします。 オートモーティブワールドで確認した次世代モビリティ技術 オートモーティブワールドで話題になったのは、CES2023で注目したトレンドと同じである、ソフトウェア定義型自動車(SDV)と自動車サイバーセキュリティでした。数多くある展示ブースの中で目立ったのは日本TCS社であり、ソフトウェア定義型自動車(SDV)を支える5つをテーマとして様々な技術を紹介していました。その中にはEVの充電に関するセキュリティ対策が多くの人々から注目を集めました。 CASE時代の自動車は車載ネットワーク、車外ネットワークとの通信で動いているため、その通信を保護するセキュリティ対策が何よりも重要になります。それなけではなく、EV充電時もサイバーセキュリティが必要になってきます。充電時に自動車と充電器の間で個人情報や決済情報など重要情報が通信されるため、攻撃者に狙われやすいです。今年からEV充電器に関する規制が緩和されるため、日本全国でEV充電器の設置が進まれる見込みです。十分なセキュリティ対策が講じられてないまま、普及が進むと膨大な経済的、事業的損失が発生する可能性があるため、EV充電に関すサイバーセキュリティも考慮すべきポイントだと言えるでしょう。 展示だけでなく、フォーラムや セミナーもソフトウェア定義型自動車(SDV)に焦点を当てて開催されました。CES2023と同様に、これからの自動車産業はハードウェアではなく、ソフトウェア中心になっていることが主流となっていることが確認できました。特に、ソフトウェア定義型自動車(SDV)を実現するためのソフトウェアの開発、構成、検証と国際標準に対し実施すべき自動車サイバーセキュリティについてのフォーラムが多くの人々から注目を集めました。 一方、自動車とはあまり関係がなさそうに見えるかもしれない大手企業マイクロソフト(日本)が登壇してNext Generation Mobilityというテーマで「ソフトウェア定義型自動車(SDV)とクラウド」を題として講演しました。自動運転車を開発するために使われるテスト車両1台から収集するデータは膨大であるため、そのデータを分析、処理するのに必要なリソースは今のところクラウドを活用する方法しかないと言われています。CASE時代にると、そのデータ量は爆発的に増加するため、電子化・電動化された車載部品だけで処理するのはとても難しくなります。そのため、パブリッククラウドのようなシステムが必要になることが分かりました。また、ソフトウェア定義型自動車(SDV)の実現には多様なソフトウェアの開発が重要になりますが、自動車メーカー以外、例えばティアワン部品メーカーやそのパートナー企業は開発基盤を整えていない可能性が高いため、誰もがソフトウェアを開発できる環境を提供するのが重要になると言い、ソフトウェア定義型自動車(SDV)の実現に向けた開発基盤を提供するためにもクラウドは次世代モビリティにとって欠かせないものになっていくと説明しました。 日本の最大の自動車技術展であるオートモーティブワールドで確認したのは「次世代モビリティの実現に必要なもの」でした。CASE時代に必要なもの、特にEVやEV充電に必要なサイバーセキュリティサービス、自動車向けソフトウェア開発のために必要なクラウド環境の構築等、日本でも次世代モビリティに向けた動きが始まりました。 次世代モビリティに近づけていくほど、サイバーセキュリティは益々重要になります。インタネットに繋がっているコネクティッド・カー、いつでも車のソフトウェアをOTA(Over The Air)でアップデートできる自動車は、常に通信を行っているため、危険な目にいつ会うかどうかをわからない状態にあります。もしも、自動車がハッキングされたら、人の命を失う可能性もあるため、サイバー脅威への対策は欠かせないものだと言えるでしょう。 2007年から17年間、自動車のサイバーセキュリティを研究・開発して当社は、この次世代モビリティに必要なサイバーセキュリティ提供しています。次世代モビリティ向けサービスとしては車内通信セキュリティ(IVS)をはじめに、V2Xセキュリティ、車載OSS脆弱性診断ツール及び車載ソフトワイヤー専用ファジングテストツール等ソフトウェア定義型自動車(SDV)向けのサービスやEV充電時に必要なサイバーセキュリティ対策「AutoCyprt PnC」も提供しています。ご興味のある方はこちらをご覧ください。 残念ながら、 オートモーティブワールドに出展することはできませんでしたが、日本の次世代モビリティの方向性や当社と協業できる事業分野が確認できた貴重な時間だったと思います。これからも当社は安全な日本のモビリティ社会づくりに貢献するために、CASE時代・ソフトウェア定義型自動車(SDV)に必要な自動車サイバーセキュリティサービスを開発・提供していきたいと思います。
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